学会

日本再生医療学会総会2018に参加してきました 

第17回再生医療学会総会に行ってきました。学会はあと1日ありますが、ここまでの内容をまとめておきます。

場所は横浜パシフィコ。
春分の日の初日に雪が降りましたが、幸い夕方にはやんでいました。

細胞を使わずに組織再生を実現する再生医療

まず、初日は中山泰秀先生が座長である「生体内組織形成術IBTAの最前線2018」に参加。
これは体内に異物が埋め込まれたときに異物の表面がコラーゲンで覆われカプセルとなる、「カプセル化」現象を利用したもの。鋳型を体内に埋め込むことで、鋳型の周囲がコラーゲンで覆われ、これを取り出し、鋳型を外すと、自分自身の組織でバイオチューブ、バイオバルブなどができます。簡単に言うと、細胞を使わずに、再生医療を実現しよう、というコンセプトです。

このシンポジウムでは、事前準備の段階では見つからなかった数多くの画像をプレゼンで拝見することができました。これが特に良かったです。というのも、こちらのページの記載を読んでも、体内に埋め込む新しい鋳型のイメージがわかりづらかったのですが、各先生が写真をたくさん使ってくださったことで、よくわかりました。

以前は鋳型の周囲にできるコラーゲン組織をバイオチューブに使用していましたが、この場合、取り出すときに、挿入時の切開創よりも、大きな切開創が必要となり、周囲組織の損傷を伴います。その後に開発された新しい鋳型では、上図(上)のように、青色の部分にできた組織だけをバイオチューブとして使い、鋳型の外周面にできた組織は使わないため、取り出すときも、挿入時とほぼ同じ切開創でよく、低侵襲化が可能となりました。中山先生方が開発中のバイオチューブは主に小児のためのものですので、特に低侵襲化が求められますね。

2時間のシンポジウムで6名の演者ということで、あまり詳しい話を聞けないのではと思っていましたが、1テーマ20分くらいでちょうどいい長さでした。

各発表の終わりに質疑応答があり、そこでの質問内容は、研究者の着目点を反映しており、大変興味深いものでした。

毎回質問にあがったのが、
・移植したバイオチューブはその後どうなるのか?
・移植後にバイオチューブ(またはバイオバルブ)に細胞が入ってくるとき、元のバイオチューブはなくなるのか?

ビーグル犬では移植後3年維持し、かつ成長に合わせてバイオチューブが伸長した事例があるとのことで、移植したバイオチューブが最終的にどれくらい残っているのか、どのように周囲の細胞が入り込んでいくのか、などの質問が多いのが印象的でした。

これについては現在研究中のようです。

学会というのは最先端の知見を当業者から聞ける場所ですね。文献を読むことでも情報のキャッチアップは可能ですが、シンポジウムでは、当業者同士の反応を見ることで、どこに関心があるのかもわかるのが面白かったです。

このシンポジウムで関心を集めたものが、生体内組織形成術で大動脈弁を開発されている宮本先生の今後の研究動向でした。ヤギの大動脈に移植後、現在6ヶ月維持しているようです。PMDAで、あと半年持てば臨床化もありでは・・・と、IBTAで(血管と比べて)特に難易度が高い心臓弁にPMDAが肯定的な見方を示した、とのことで、宮本先生の研究の行方に他の方たちも関心を寄せている様子でした。

この日の午後のランチョンセミナーで、サイフューズ社の中山功一先生による、同じく人工血管の発表がありましたので、こちらにも出席しました。

中山先生のアプローチは、下図のように、剣山に細胞を積層していき、剣山をぬくと、細胞100%の組織体になるというもの。
これは「スキャフォールドフリーな三次元組織作製」と言われますが、ここでスキャフォールドというのは、「足場」を意味します。足場とは細胞が生きるために必要な周辺環境で、「家」のようなもの。または、「種」を細胞だとしたら、スキャフォールドは種が育つために必要な「田んぼ」でしょうか。この「田んぼ」がなくても、三次元組織体を作る、というのが中山先生が発明した剣山メソッドです。

興味深かったのが、生体内組織形成術の中山先生も、剣山メソッドの中山先生も触れられていた、細胞を破壊することなく厚みや欠損の有無を調べるOCT(光干渉断層計)。サイフューズ社ブースで期せずして中山先生とお話する機会があったのですが、剣山メソッドの人工血管は、OCTでも厚さを調べるのに限界があるとのことでした。細胞を作れても、評価する技術が追いついていないことも、再生医療の抱える課題の1つですね。

論文数がゲノム編集を上回ったエクソソーム

今回、一番楽しみだったのが、「バイオミメティックスによる再生治療・生体幹細胞とエクソソーム」というシンポジウム。絶対聞きたかったのが、落谷孝広先生の講演でした。2日目の9時ということで、夫が子供の送りを担当してくれなかったら参加できなかったので、夫に感謝です。電車が遅れ、みなとみらいから会場へダッシュ。ぎりぎり間に合いました。
大会場なのに立ち見の人もいるほど大盛況。

エクソソームは(恥ずかしながら)最近知ったばかりですが、この研究が現在非常に盛んなことが、落谷先生のお話からうかがえました。2022年には370億円規模の市場になると予想され、(確か昨年)論文数の延びが多かったテーマのNo1がエクソソームで、ゲノム編集を上回ったそうなのです。これから特許も増えていきそうですね。

エクソソームとは、細胞から分泌される物質で、その中にはRNA、DNA、がん治療で注目されるマイクロRNAなどが含まれています。エクソソームは唾液や血液や尿、羊水など体液中で観察され、採取が簡単なことから、これを使ってリキッドバイオプシー(体液診断)や治療に応用できないか、研究が行われています。

癌の転移先を予測できるようになる?

癌転移との関係性についても注目されています。これまでの研究で、癌が特定の臓器に転移する前からどの臓器に転移するかは決まっている可能性があり(転移の臓器特異性)、行先を決める「郵便番号」の役割を担っているのもこのエクソソームのようです。そこで、エクソソームを利用して、がんの転移先を予測したり、早期がんの発見に応用できないか、ということにも期待が寄せられています。

今回の学会では、エクソソームと、間葉系幹細胞(MSC)のシンポジウムも注目を集めていました。再生医療と聞くと、iPS細胞やES細胞をイメージする方も多いと思いますが、近年MSCも細胞治療を実現するものとして期待が寄せられているようです。

MSCは体性幹細胞の一種で、骨髄や脂肪などにあり、骨、軟骨、脂肪などに分化することができる細胞です。MSCを投与すると、損傷のある部位へ集まり、治癒する能力があることから、骨髄由来または脂肪組織由来のMSCを再生医療に応用しよう、という研究も盛んに行われています。その中で、脂肪組織由来のMSCの方が採取しやすい上に、骨髄由来よりも数が多いことから、現在は脂肪組織由来のMSC研究が盛んなようです。

さらに、MSCによる損傷治癒の主役は、実はエクソソームなのではないか?ということも明らかになってきているようで、最新の知見は次々と更新されていくのだな・・・・とかじったばかりの私は追いついていくのに必死でした。

他にも書きたいことはたくさんあるのですが、これくらいにしておきます。出澤真理先生のMuse細胞の最新の知見を聞けたことも貴重な機会でした。Muse細胞もこれから再生医療を患者にとって手の届くものにする可能性があり、理解を深めたいと思います。

やはり印象に残るのは、それぞれの研究者が疑問に感じたところですね。落谷先生も、出澤先生も、MSCが投与後に、肺にトラップされ、肝臓にあまり届かない現象に度々触れられていました。落谷先生のコメントは、「肺にトラップされるというより、わざと肺に行っている可能性もある」。次回の学会では、投与後のMSCの動きについて、新しい知見を聞けるのが楽しみです。

来年には京都でエクソソームの学会が開催されるようです。その時にプロになっていることを願いつつ、メモ。

今回の学会では、シンポジウムではない、口演発表の中で、若手研究者が他の研究者の発表に議論をいどむ場面も見かけました。一方、シンポジウムでは、第一線の先生方が互いの研究成果に敬意を示しながら、他の研究者から学ぼう、という姿勢も見受けられました。

参加者は自由に質問できるのですが、今回はついていくのがやっとでした。ついていけなかった講演もたくさんありました。次回参加する時は、各演者の発表を聞いて質問したい疑問が考えなくても沸いてくるくらいに、成長していられるよう、引き続き勉強に励みます。

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