アミドが塩基性を示さない理由

ビウレット反応について勉強していた時、アミドが塩基性を示さない理由について、すぐに納得できなかったので、その理由を考えてみました。
アミド結合
アミドが塩基性を示さないということは、攻撃する力が弱いということ、つまり分子として安定しているからではないかと考えられます。安定している=塩基としての反応する力が弱くなる、と考え、アミドの安定性から切り込んでみました。
逆に不安定であると、反応性は高くなり、塩基として反応する力が強くなります。では、アミドの安定性は何が決定しているのでしょうか。
安定性・・・という言葉から思いつくキーワードは、共鳴構造、非局在化。
電子の非局在化というのは、電子が一か所に止まらず大きな範囲を移動していること。このように電子が移動している、つまり電子が非局在化すると、電子は安定化されます。逆に不安定、というのは、反応性が高いということ。電子が局在化している状態、つまり電子が偏っていると、反応性が高くなります。
電子が非局在化している時、共鳴構造をとります。
電子対が動くことにより複数の構造式を書くことができる場合、共鳴構造といいます。
そこで、アミド結合をよく見ると、共鳴構造をとることがわかります。
ここで反応するのに活躍するのが、窒素原子(N)にある非共有電子対ですが、
アミドの場合、Nのとなりに「-C=O結合」があるのがポイント。
窒素原子の非共有電子対は結合に関与しておらず、移動することができます。つまり、窒素にある非共有電子対は分子内で移動することができます。窒素の非共有電子対が酸素原子まで非局在化し、分子が安定化します。
もしここで、 Nのとなりにメチレン(CH2)が挟まっていたら、電子は移動できません。
アミドでは、Nのとなりに二重結のC=Oがあるため、電子が移動し、アミドはC=Oをとる構造と、C=Nをとる構造が両方存在していることがわかります。このように共鳴構造をとるため、アミドは安定化している、つまり塩基性を示さない、ということなのですね。
余談ですが、アミドの中間体にC=N結合があるように、C-Nは二重結合の性質を持ちます。そのため、アミド結合を切りにくい、というのは、有機合成で解決すべき性質でもあるようです。
こういうことだけ考えて1日過ごせてしまうのですが、我慢して先に進みます。
参考:
http://www.kagakudojin.co.jp/special/click_yuki/click_oc/appendix/index_j/aa/aa_amide.html
https://pub.maruzen.co.jp/book_magazine/yuki/web/mokuji/pdf/w06-4.pdf
http://www.sci.kumamoto-u.ac.jp/~ishikawa/ishikawa-lab/Lecture_jiang_yi_zi_liao_files/%E7%AC%AC%EF%BC%91%EF%BC%97%E5%9B%9E.pdf