知識の立体化、肉付け

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化学の勉強で学んだことを、明細書でどのように使われているか調べながら進めています。明細書でどのように使われているかを知る程度にとどめ、さらっと進めても良いと思うのですが、明細書の読みこみで(楽しくて)毎回時間を使ってしまいます。

今回は「混成軌道」で検索したところ、要約だけで58件。意外と出てくるようです。日本ゼオン社の「共役ジエン重合体の製造方法」というタイトルの明細書を読んでみました。(【国際公開番号】WO2016/068170)

企業名とタイトルから、タイヤゴムに関するものかな?と推測。やはりそうでした!

要約

本発明は、少なくとも共役ジエン単量体をリビングラジカル重合法により重合させることにより、重合体鎖末端にハロゲン原子を有する共役ジエン重合体を製造する方法であって、銅塩、sp混成軌道を有する窒素原子を配位原子として有する多座配位子、及び有機ハロゲン化物を用いてリビングラジカル重合反応を開始させて、数平均分子量(Mn)が1,000~1,000,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.0未満の共役ジエン重合体を製造することを特徴とする、共役ジエン重合体の製造方法である。本発明によれば、重合体鎖末端にハロゲン原子を有し、かつ、所望の分子量を有し、分子量分布が狭い共役ジエン重合体を、効率よく、かつ、安価に製造する方法が提供される。

結論をまとめると、分子量のばらつきがない、分子量分布が狭い高性能なゴム製品を製造するにあたり、「リビングラジカル重合」という方法で重合します。重合で使用する触媒として、これまでルテニウム錯体を使用していましたが、反応時間が長くなりがちであること、ルテニウムは金属成分として高価である、という課題がありました。そこで、より安価にゴム製品を製造するために、ルテニウムの代わりに銅錯体を触媒に使ってみたところ、望む大きさのゴムが得られ、分子量のばらつきも少なかった、ということでした。

要約の「sp混成軌道を有する窒素原子を配位原子として有する多座配位子」で、わざわざsp2混成軌道を書くのはなぜだろう?と思いました。ここで、配位子というのは、錯体の中心金属に配位結合する分子やイオンのことで、配位原子は中心金属に直接結合している原子を指します。つまり、この発明では、錯体の中心金属と結合する配位原子を複数有する配位子を使う、ということになります。

そこで、明細書で登場する多座配位子を書いてみました。青色がsp2混成軌道、黄色はsp2混成軌道ではないため、黄色のN原子は配位原子にならない、つまり錯体形成に直接関与するのは水色のN原子であることを示すために、「sp混成軌道を有する窒素原子を配位原子として有する多座配位子」と書いたのかな、と考えました。

そこで、上記写真の水色のN原子は本当にsp2混成軌道であるか、調べてみました。

ざっとgoogle検索で、画像を検索したところ、やっぱり。


出典:chemistry

念のため、アニリン、ピリジン、ピロールの場合で混成軌道を書いてみました。なるほど確かにsp2混成軌道になります。今回の収穫として、基底状態からsp2混成配置に変わる際、同じ原子でも異なる混成配置になるということを知りました。アニリン、ピロールでは非共有電子対はp軌道に入りますが、ピリジンでは非共有電子対はsp2軌道に入っています。この写真の右側に書いた軌道の絵を眺めると、塩基性の強さの違いも説明できるのですよ!混成軌道を知ることで、分子の反応性まで知ることができることに感動しました。

google検索を活用すると、推測、検証、裏付けをできるのですよね。自分でこうかな?と仮定して、その答えを英語で検索すると、日本語より早く見つかることが多いです。

今回の発明では、有機ハロゲン化物を開始剤、銅錯体を触媒として、単量体を重合させています。製造される重合体は末端にハロゲン原子を有し、このハロゲン原子を利用することで、末端に望む官能基を導入できるようです。つまり、変性SBRに関する発明ということですね。リビングラジカル重合、共役二重結合、錯体などの切り口からも多面的に広がりそうな明細書でした。

基本知識を学んだあとに、明細書で実践、肉付けするのがとてもよい方法だなと思っています。

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