勉強

研究魂に感動 -グラファイトと村上睦明さん-

化学の勉強の後の明細書は、興味の赴くままに読んでいますが、これまでの知識を整理するために以前のキーワードと新しく学んだキーワードを組み合わせて(例えば、グラファイト×混成軌道など)検索したりしています。それについて、わかる!!!!があって嬉しかったことも記事にしたいのですが、今回はある研究者の想いに触れ、はまってしまったグラファイトについてご紹介します。

携帯電話やPCなどモバイル機器のCPUの性能が上がれば上がるほど、悩ましいのがCPUから発生される熱。その放熱に使われるのがグラファイトシート。身近なものでは、鉛筆の芯ですね。

グラファイトの特許を3件読んでみました。

グラファイトシートについて基礎知識を調べている過程で、グラファイトの研究に携わっていた村上睦明さんのお話に感動。喜ばしいデータを枕元において寝ていられたことがあるそうです。ふと印刷した明細書を見ると、村上さんのお名前が!

グラファイトは炭素ですが、同じ炭素であるダイヤモンドとは構造が異なります。

グラファイトの構造

出典:Quora

ダイヤモンドの炭素原子は電子がすべて共有結合に使われていますが、グラファイトの場合は1つ電子があまり、この電子は自由に動くことができます。電子の非局在化ですね。

そのため、下図右のように、電子雲が形成されます。

出典:Quora

原子核の周りに存在する電子は常に動いているため、ある時はマイナスがバランスよく分布されたり、ある時はマイナスが一部に偏ったりしています。この電子は常に動いていて、必ず一定に分布されているわけではありません。例えば原子にマイナスの電荷の偏りが生じた時、つまり下図の真ん中の状態になると、赤色のプラスの部分(左)と、マイナスの部分(右)が互いに引き寄せられます。この電荷の偏りによって生じる引力、反発力のことをファンデルワールス力といい、原子、イオン、分子間に生じます。

グラファイトは下図のように、ピンク色部分の共有結合部分と、黄緑色のファンデルワールス力で引き寄せられた部分とを持つ結晶構造になっています。

これにより、グラファイトは縦方向よりも面方向への熱伝導性に優れるようです。これは、余った1つの電子が動き回り、平面近くで電子雲を形成するため、平面近くの電子密度が高いからだろうか・・・と思って調べてみたところ、グラファイトの場合、熱伝導性への自由電子の寄与は小さく、フォノンという粒子が支配的のようです。このあたりは今後の課題においておいておきます。グラファイトが面方向に熱伝導性が優れる特質を利用して、グラファイトシートが製造されています。これに関する特許がたくさんありました。

グラファイトの製造工程は以前は大変時間がかかるものだったようで、
コークスの炭素化に1ヵ月、
グラファイト化にさらに2か月、という長さ!

現在では高分子フィルムを直接熱処理してグラファイト化する方法が行われているようで、この改良に関する発明が多い印象を受けました。高分子フィルムをまず500℃で焼成すると水素原子が外れ、1000℃で焼成すると酸素原子が外れ、2000℃で焼成すると窒素原子が外れ、3000℃でついにグラファイトが完成するようです。冒頭の村上さんは当時、何度も何度も設定を変えて試行錯誤されたようです。私がgoogle検索であっさりと知るに至った高分子フィルムによるグラファイト化技術の裏に、村上さんを始めとする多くの研究者の汗と涙があったのか・・・と感慨深く特許を読みました。

高分子グラファイト化


出典:化学技術振興機構

高分子フィルムのグラファイト化によって、短時間、低コストで結晶化に成功したものの、課題は色々あるようで、その課題の1つが、厚いグラファイトを製造するのが難しいというもの。原料とする高分子フィルムを厚くすると、熱分解の過程で発生する分解物がシート内部に残留し、グラファイト化の段階で残留物がガス化してシートが膨れ上がり、シートそのものを破壊してしまうようです。この厚さの限界に挑戦する特許をいくつか見かけました(実際はもっとあると思われます)。

村上さんがカネカの特許で着目されたのが、複屈折と線膨張係数。これが良質なグラファイトができるかどうかの最も直接的な指標だとのこと。今回は線膨張係数は置いておいて、複屈折について調べてみました。

複屈折とは、光線がある物質を透過したときに、2つの光線に分かれること。↓こんな感じに見えるのですね。

出典:オリンパス
出典:Science 2.0

複屈折と良質なグラファイトができることの関係についてはまだ理解できていませんが、興味をそそられる発明でした。

グラファイトは炭素でできているので環境に優しく、熱対策素材として活用が広がり、1000億円規模の市場となりうる、とのことに驚きです。

結論のないとても中途半端な記事ですが(汗)、村上さんの研究話に感動して、グラファイトの記事をどうしても書きたかったのです。まだまだ力不足ですが、発明者の苦労にも少し想いをはせながら特許を読んでいきたいと思いました。

村上さんのお話はこちらからどうぞ。

情熱が生んだセレンディピティ Panasonic

JP2010-168281A
JP2013-193944A

関連記事

  1. 勉強

    粘着剥離解析に関するセミナーに申し込みました

    協和界面科学社開催のセミナーに申し込みました。http://w…

  2. 勉強

    化学は謎とき

    前回の投稿後、体調が悪化し、寝込んでいました。実際は仕事がありまし…

  3. マインドマップ

    3Dプリンタから広がるテーマ

    poli-Studioの野崎さんの解説が気に入り、繰り返し聞いています…

  4. マインドマップ

    朝6時、腑に落ちる

    マインドマップ作成で感じた気づきを2点。①「わかる」「見たこと…

  5. 勉強

    明細書を理解する難しさ

    昨日の記事で書いたウォーターズのセミナーは「ご参加いただけません」と連…

  6. 仕事ノート・勉強ノート

    とにかく手で書く

    大学生の頃、有機化学の試験前はいつも気が付けば朝、という状態でした。何…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP