1. TOP
  2. マインドマップ
  3. 溶けるということ -塩化ナトリウムと砂糖が水に溶ける理由-

溶けるということ -塩化ナトリウムと砂糖が水に溶ける理由-

電離、溶解の概念について、誤解、理解が不足しているところがありました。

溶解する=電離する、が必ずしも成立するわけではない。
非電解質でも水にとけるのはなぜだろう?

今回は固体が水に溶ける場合について、考えてみたいと思います。

NaCl(塩化ナトリウム)が水に溶ける理由

まず、身近にある具体的なもので、「溶ける」現象がわかりやすい例として、食塩(NaCl)を水に溶かす場合をイメージしてみます。

NaClは、1つのナトリウムイオンと1つの塩化物イオンが結合しただけのものではなく、下図のように、たくさんのナトリウムイオンと塩化物イオンが交互に規則正しく配列された結晶状態で、安定した状態になっています。青いビーズと赤いビーズを規則正しくケースにならべた、というとイメージしやすいかもしれません。この状態は、NaClにとってとても居心地の良い状態なのです。


出典:AGRUPACIONES DE ÁTOMOS

NaClの結晶構造では、陽イオンのナトリウムイオンと陰イオンの塩化物イオンとが、プラスとマイナスの引力によって結合しています。これはイオン結合といい、共有結合よりは弱い結合ですが、結晶をつくるひとつひとつのイオンが電気的に反対のイオンといくつも引き寄せ合って結合しているため、結晶全体では非常に安定した構造となっています。NaClが水に溶けるためには、この結合を切り離す、何らかの力が必要になります。

ではここで、水に注目してみます。
水は下図のように、水分子の酸素原子は負に分極し、水素原子は正に分極しています。このように分子を構成する原子の電気陰性度(分子内の原子が電子を引き寄せる強さ)の違いによって、分子内に電荷の偏りがあるものを極性分子といい、水はその代表例です。


出典:Quora

NaClを水にいれると、水分子の電荷の偏りによって、水分子のマイナスの酸素原子がプラスのナトリウムイオンに、プラスの水素原子がマイナスの塩化物イオンに、強く引き付けられていきます。そして、水分子がナトリウムイオン、塩化物イオンそれぞれを取り囲みます。つまり、ナトリウムイオンと塩化物イオンの結合を水分子が引き離してしまうのですね。


出典:Wikimedia commons

NaClのように、水の中でイオンに分かれることを電離といい、電離してイオンにわかれる物質を電解質といいます(電解質は水にとけて電気を通す物質、ともいえます)。上の図からわかるように、電離したイオンのうち、正の電荷を持つナトリウムイオンと、負の電荷を持つ塩化物イオンをそれぞれ水分子が取り囲んでいますね。このような現象を水和といいます。このようにして、食塩は、水1リットルに350グラムも溶けるようです。すごいですよね。

ここまでのまとめ

・NaClは規則正しく配列されたイオン結晶である
・NaClはイオン結合によって形成されている
・水分子は負の電荷を持つ酸素原子と、正の電荷を持つ水素原子から成る極性分子である
・電離=水溶液中で電解質が陽イオンと陰イオンに分かれること
(注意:電離には光や電磁波などにより、原子の軌道電子が弾き飛ばされる、という意味もあります)
・水和:水溶液中で、溶質の分子またはイオンが周囲の水分子を引き付け、1つの分子集団をつくる現象

電解質という言葉がでてきました。電解質は、水溶液中でイオンにわかれる物質のこと。
反対に、水溶液中でイオンにわかれない物質、つまり電離しない物質のことを非電解質(水に溶けても電気を通さない物質)といいます。

非電解質という言葉から、非電解質は水に溶けないようなイメージがありました。そういう時は具体例で考えてみます。

砂糖が水に溶ける理由

非電解質の代表例が、砂糖です。

出典:family lifestyle

砂糖は水に溶けますよね?水溶液中で電離しなくても、水には溶ける。
この事実から、溶解=電離が必ずしも成り立たないことがわかります。では、砂糖は電離しないのに、なぜ水に溶けるのでしょうか?


出典:My science school

先ほどのまとめで書いた、以下がヒント。
水和:水溶液中で、溶質の分子またはイオンが周囲の水分子を引き付け、1つの分子集団をつくる現象

水和とは、イオン結晶だけに限った話ではないのですね。砂糖のように、電離しない非電解質でも起こる現象です。

冒頭で、水分子は極性分子だとお話しました。水分子の酸素原子は負の電荷を持ち、水素原子は正の電荷を持つため、水分子内には電荷の偏りがありますね。すると、分子内で電荷の偏りがあるため、付近の水分子同士が互いに引き寄せられます。


出典:Wikimedia commons

付近の水分子は互いに引き寄せられ、さらに他の水分子とも引き寄せられています。

上図の点線部分の結合を、水素結合といいます。酸素のように電気陰性度の大きな原子と結びついた水素原子は、酸素原子だけでなく、近くにある窒素、硫黄、フッ素などの原子ともマイナスとプラスの引き合いによって、水素結合を形成します。水素結合は、DNA、RNAなど生体内でも実にうまく利用されている神秘的ともいえる結合です。

この水素結合は、共有結合やイオン結合よりは1桁弱いものです。すると、NaCl結晶を構成するイオン結合には勝てそうにありませんが、水溶液中では水分子が圧倒的に多いため、水分子の相互作用が、イオン間の結合を弱めることができます。(これには格子エネルギー、水和エネルギーも関係するのですが、今回は割愛します)。

砂糖に話を戻します。砂糖を水の中にいれると、砂糖(ショ糖)が分子内にもつヒドロキシル基(OH基)と水分子が水素結合するため、砂糖は水に溶けることができます。しかし、電離はしないため、砂糖水は電気を通さない、というわけなんですね。


出典:slideplayer

これで、砂糖のような非電解質も水に溶ける理由がわかりました。ここでは、水素結合がポイントになりました。

NaClは、水溶液中で電離して溶ける、つまり電解質が溶けるケース、
砂糖は、水溶液中で電離はしませんが水素結合により水和して溶けるため、非電解質が溶けるケース、になりますね。
このように、
電解質が水に溶ける
非電解質が水に溶ける、このほか、
水酸化カルシウムのように電解質だけと水に溶けない場合もあります。

図解によるまとめ

今回の内容をスライドにまとめてみました。現時点で理解していることをまとめたものですので、何か気づきがあれば加筆したいと思います。

マインドマップにまとめたのがこちら。溶ける場合にフォーカスしています。

溶解と電離に関する誤解について、だいぶスッキリしました。今回は、溶解という大きな現象の中の固体が水に溶ける場合にフォーカスしてみました。

ここまで読んで、次のような疑問がわいてくると思います。

NaClが水に溶けるのに、同じイオン結晶であるAgCl(塩化銀)が水にほとんど溶けないのはなぜ?これについては機会があれば改めて記事にしたいと思います。

\ SNSでシェアしよう! /

Ayumi Office ー特許に魅せられてーの注目記事を受け取ろう

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Ayumi Office ー特許に魅せられてーの人気記事をお届けします。

  • 気に入ったらブックマーク! このエントリーをはてなブックマークに追加
  • フォローしよう!

コメントを残す


この人が書いた記事

  • 破壊的アウトプットへ

  • ある翻訳者のひらめき 選ばれる翻訳者になるための方法とは?

  • 苦手だけど好きなこと 

  • トヨタの技術に注目!縁の下の力持ち 排ガス浄化に欠かせない触媒コンバータ

関連記事

  • 当業者の理解レベルに近づくために

  • 言葉に敏感になってきた

  • 生命の不思議に魅了される ‐炭酸‐重炭酸緩衝系-

  • ゼータ電位と後悔の気持ち

  • 化学が止まらない!

  • 視界が少し開けてきた